' 下田市旧市街地区 | 逃げ地図

事例紹介

静岡県 下田市旧市街地区

対象災害
  • 津波
  • 土砂災害

経緯と目的

下田市は、静岡県の津波避難ビルの指定基準に従い、2001年には17棟を指定したが、その後11棟の解除と5棟の追加により、10棟(2014年12月現在)となり、全て下田市の旧市街地区に立地していた。 指定された津波避難ビルの中には、耐震性、耐浪性(堅牢性)、高さなどそれぞれの安全面の要素において不安視される建物が少なくなかった。

一方、旧市街地区の高台に指定された緊急避難場所は下田幼稚園など限られており、高台における緊急避難場所とそれに至る避難道路等の整備および指定津波避難ビルの追加が課題になっていた。また、旧市街地区にも土砂災害警戒区域が広がっており、急傾斜地崩壊危険区域に指定されている緊急避難場所もあり、土砂災害にも留意した避難計画の検討が課題になっていた。

こうした状況下、下田市では、地域防災課が担当する津波避難計画地図づくりと並行して、建設課が担当となり、緊急避難場所や避難道路の整備などを盛り込んだ都市計画マスタープランの改定に向けたワークショップなどを進めていた。 そこで、土砂災害も考慮しながら、津波避難ビルや緊急避難場所、避難道路等を再検討するため、逃げ地図づくりワークショップを開催した。

方法と内容

旧市街地区を「東本郷・西本郷」、「弥七喜・大坂・中央区・港」、「新田・大和・住吉」の3区域に分け、さらに津波避難ビルや急傾斜地崩壊危険区域に避難できる場合とできない場合などを想定してさらに3グループに分け、全部で9班に分かれて逃げ地図を作成した。 逃げ地図づくりの条件設定によって次の3グループに分けた。ひとつは津波避難ビルと急傾斜地崩壊危険区域の高台に避難できるグループ。2つ目は、津波避難ビルには避難できないが、急傾斜地崩壊危険区域の高台には避難できるグループ。3つ目は、津波避難ビルにも急傾斜地崩壊危険区域の高台にも避難できないグループ。

成果と課題

逃げ地図づくりの各班の結果を総合すると、安全な緊急避難場所は、高台の公共施設が集中して整備されている敷根地区の高台下に位置する「下田幼稚園」と海にせり出した小山の上の「下田公園」のみであることから、下田小学校の裏手などの緊急避難場所と避難道路の整備が課題として浮かび上がった。 東本郷・西本郷区では高台の緊急避難場所までの避難時間が、津波到達時間よりもかかることが明らかになり、津波避難ビルの必要性が高いため、津波避難ビルの確保と指定が課題としてあがった。 下田市は、毎年9月に防災やまちづくりに関するプロジェクトの進捗状況を管理するため、市内6地区で住民による「進行会議」を設置する旨を都市計画マスタープランに盛り込むこととした。建設課の担当者は、「進捗状況の細かなチェックにより、より効果的なマスタープランになる。逃げ地図を活用したい。」と静岡新聞の取材に答えた。 ワークショップの参加者は、自治会の防災担当役員が多く、防災意識の高い点が特徴に出ていた。現に、地域で年2回の避難訓練を行っており、防災活動を定期的に行っているため、参加者自身、災害が生じた際、避難の見通しを持っていたが、現状の防災計画やハザードマップが地域に定着しているとはいえない。逃げ地図づくりワークショップのように防災に関する議論を行うことで、住民間で地域や防災に係る知識などを共有することができるし、他世代間、他地域間など様々な主体で、このような議論を継続的に行っていくことで、住民全体での防災意識の醸成の道具となろう。しかし、高田市広田町のように広く一般市民に逃げ地図づくりの成果を理解させるのは困難が予想されることから、広田町で行った防災アートプログラムの導入が検討課題となり、下田・遊ぼう祭2016を開催することになった。

基本情報

開催年月日 2015年5月13日
開催場所 下田市市民文化会館
主催 RISTEX 逃げ地図プロジェクトチーム
協力 下田市建設課、地域防災課
参加対象 下田・本郷の自主防災会の関係者などの住民
参加者数 約50名(9班構成)
新聞掲載 伊豆新聞 2015年6月16日
静岡新聞 2015年7月12日
学会発表

冨田靖寛・山本俊哉・山中盛・木下勇「下田市における津波避難ビルの指定に関する実態と課題 逃げ地図を活用した津波防災まちづくりに関する研究(5)」日本建築学会大会(関東)学術講演梗概集, 2015年9月6日

リンク先

https://www.aij.or.jp/paper/detail.html?productId=372658

ワークショップの様子

新田・大和・住吉 逃げ地図(後日リライトしたもの)

作成した逃げ地図を基に発表を行なう地域住民

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