' 下田市立下田中学校 | 逃げ地図

事例紹介

静岡県 下田市立下田中学校

対象災害
  • 津波

経緯と目的

  • 下田市では、静岡県の第4次被害想定(2013年6月公表)を受けて、南海トラフ沖地震による津波高(最高33m、平均15m)、津波到達時間13分〜18分を想定し、①緊急避難施設の整備、②自主防災組織の強化、③減災意識・防災意識の強化を基本方針とする津波対策を開始した。また、津波避難ビルの追加や指定避難路の確保等による避難困難地区の対応、老朽化市庁舎建て替え等による防災拠点の整備等を課題とし、都市マスタープランの見直しに着手した。
  • こうした状況下、逃げ地図づくりプロジェクトチームは、2013年5月に下田市の行政機関や関係団体に逃げ地図づくりを説明するとともに、NPO法人賀茂災害ボランティアコーディネートの会の研修の場で逃げ地図づくりを説明する機会を得た。また、同年8月、下田中学校での住民団体による避難所宿泊訓練の場にて、逃げ地図づくりプロジェクトチームメンバーが宿泊して、夜間の空いた時間を使い地域住民を対象としたワークショップを実施した。同ワークショップでは1/2,500の中心市街地区を中心とした地図を使用し、被害想定に準ずる海抜20mの浸水高と道路の交点を避難目標ポイントとして作成した。また、明治大学学生有志が事前に作成した同地区の逃げ地図(試作版)を示し、それと比較して意見交換を行った。
  • 中心市街地区は、津波対策には多くの課題があったが、自治会・町内会がいくつかに分かれ、若い世代の流出で高齢者比率が高く、すぐに対応が進まない状況にあった。そこで、逃げ地図づくりプロジェクトチームが下田市教育委員会を通して下田中学校での逃げ地図づくりワークショップを提案して、中学1年生の全クラスにて総合的学習の時間の2コマを利用して行うことになった。

方法と内容

  • 下田中学校の逃げ地図づくりワークショップは、1年生88名のうち欠席者を除いた83名の参加を得て行われた。ファシリテーターは明治大学の学生を中心に、千葉大生とNPO法人賀茂防災ボランティアコーディネートの会の協力を得て、下田市中心市街地区の北部・中部・南部をそれぞれ2斑、吉佐美地区2斑、田牛地区1斑の計9斑に分かれて実施した。
  • 旧市街地区では津波避難ビルの指定が課題であったので、緊急避難場所として津波避難ビルを想定する場合とそうでない場合として各2斑を分けた。なお、下田中学校区には津波浸水域でない高台地区の旧岡方村や大賀茂地区もあり、その生徒達には中心市街地や浜辺に遊びに来ているという想定で、居住地でない地区に入ってもらった。
  • 当日のプログラムは、逃げ地図づくりの主旨と方法を説明(15分間)した後、9斑に分かれて各斑のファシリテーターの進行により避難目標地点の確認や避難経路の色塗り、意見交換などのグループワーク(60分間)を行い、最後に結果を各斑が発表する(30分間)という流れで実施した。

成果と課題

  • 逃げ地図づくりを通して、避難時間がかかることが明らかになった箇所に対し、津波避難ビルの増加や避難経路の整備など、避難対策に関する意見が見られ、地域の防災を考えるだけでなく解決策を考える機会となった。特に、下田北部では津波避難ビルの重要性に気付いたという意見が複数あり、津波避難ビルを想定した逃げ地図と想定しない逃げ地図の比較検証の効果が見られた。
  • 参加した生徒対象のアンケート結果を見ると、難易度については斑の違いが際立った。特に下田中部地区において難しかったという回答が多かった。これはその地区に住んでいない割合が高い点と「道が複雑だった」という街区の複雑な状況が反映されているためと想定される。
  • 参加した生徒対象のアンケートでは、86%が「他の人にも勧めたい」と答えていた。家族に勧めたいという意見が多かったが、「小学生やお年寄りにもできると思う。地区会などでやればいいと思う。」と地区に広げることを提案している意見もあった。また意見の中には写真などを利用する改善も提案しているものもあった。

基本情報

開催年月日 2014年2月14日
開催場所 下田中学校体育館
主催 下田中学校
協力 NPO法人賀茂災害ボランティアコーディネートの会
参加対象 中学一年生
参加者数 83名(9班構成)
新聞掲載 静岡新聞 2013年2月23日
学会発表

木下勇・山本俊哉・白幡玲子・吉野加偉・羽鳥達也・谷口景一朗「下田市における逃げ地図の活用と展開プロセス-逃げ地図を活用した津波防災まちづくりに関する研究(3)日本建築学会大会(近畿)学術講演梗概集, 2014年9月

ワークショップの様子

下田中学校での逃げ地図づくりの様子

下田中学校で作成された逃げ地図の一例

作成した逃げ地図の発表(下田中学校)

地域の関係住民やマスコミ関係者も大勢参加した

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