事例紹介
岩手県 陸前高田市長部地区
- 対象災害
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- 津波
経緯と目的
- 岩手県陸前高田市の南に位置する長部地区出身の市会議員の呼びかけにより開催されたワークショップ。
- 震災から1年以上経った頃で、住民のほとんどが高台に移転していたが、浸水域に工場が新設されているなど、復興も始まっていた。そうした状況の中で、町の将来を集まって考えるきっかけとしたいと期待され、市議から逃げ地図を作るワークショップ開催の依頼を受けた。
- 逃げ地図を理解してもらい、今後の復興の変化によって変わる地図でも、自主的に逃げ地図を描けるようになってもらうことを目的とした。
方法と内容
2012年4月21日
・ワークショップ前日は、対象地域を視察。
・地元の最新の地図は地元の設計事務所、土木事務所などにある。仮設住宅まで反映してある地図を入手。
・逃げ地図が避難経路を確認し、概略の避難時間を可視化するだけでなく、今後の街をより安全に改善する施策を検証できることまで説明したが、ワークショップ開催場所のコミュニティセンター長から、単純に避難時間を塗り分け、避難経路まで確認したら終了してほしいとのお願いを受ける。街が津波に流され、仮設住宅暮らしの人たちに、今後の改善提案を考えてもらうのは酷であるとのこと。
2012年4月22日
・ワークショップ開催。湊、上長部、二日市、古谷、双六、要谷、福伏の7地区の区長、地元議員が参加。区長は全員仮設住宅に暮らしていた。
・実際に津波がどこまで来たのか、地元の人たちに情報を提供してもらうことにより、参加者が能動的かつ活発になった。
・住んでいた地域ごとに3班に分かれて逃げ地図を作製した。
・色塗りの仕組みについての理解は早く、作成は1時間程度で終了。
・前日のコミュニティーセンター長からのお願いのとおり、逃げ地図を作成することで具体的な改善案を構想しやすくなることは説明しなかったが、参加者から
「赤いポイント(高台への道や階段が通じている避難ポイント)が増えれば緑が増える。崖を登れる階段があったら海際が緑にでき、工場で働く人も安心して働けるのではないか。」
といった意見が多く出された。
・コミュニティセンター長からは、
「仮設住宅暮らしのみんなが、こんなに楽しそうに会話をしているのは、震災以後はじめて見た。」
と感謝の言葉を頂いた。
成果と課題
- ワークショップ参加者が地元情報の提供者になることで能動的な取り組みとなる。
- 逃げ地図の仕組みを理解することで、改良案が作れることを知らせなくても、参加者自らが改善方法を発想するようになることが分かった。
- 課題としては、こうした話し合いの場が、住民の自主的かつ継続的なものにできるかといった点。
基本情報
開催年月日 | 2012年4月21日、 2012年4月22日 |
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開催場所 | 長部地区コミュニティセンター |
主催 | 長部地区コミュニティ推進協議会 |
協力 | 日建設計ボランティア部 |
参加対象 | 長部地区の住民、陸前高田市の住民 |
参加者数 | 約25人 |
ワークショップの様子
逃げ地図づくりワークショップの様子
3班に分かれて逃げ地図作成
地区ごとに作成された逃げ地図を合成したもの