事例紹介
岩手県 陸前高田市立高田東中学校
- 対象災害
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- 津波
経緯と目的
- 陸前高田市は、2013年2月に地域防災計画を見直し、住民による「地域ごとの津波避難計画」の策定を県及び市が一体となって支援することを定めるとともに、緊急避難場所や指定避難所などを記した市内各地区の津波防災マップを配布した。しかし「地域ごとの津波避難計画」の策定の具体的な対応策や支援についての記載はなく、配布された津波防災マップについても、小中学校の避難に関する記載や被災時の孤立問題に対する具体的な計画の記載がなく、緊急避難場所、指定避難所の検証が課題となっていた。
- 高田東中学校は、東日本大震災後、旧米崎・旧小友・旧広田の3中学校が合併し、旧米崎中学校の校地に設置されたが、旧小友中学校と旧広田中学校出身の生徒にとっては不慣れな土地であったことから、生徒と保護者の間に通学路の安全性に関して不安が広がっていた。
- 旧米崎中学校区においては、米崎小学校と旧・米崎中学校が避難所に指定され、高台の道路で繋がっているが、低地を通らないと遠回りになることから、登下校中の避難が検討課題になっていた。
- そこで、通学路または津波浸水区域からの避難場所・経路・時間の認知の促進を図ることを目的として逃げ地図づくりの事前検討会と中学校における本番のワークショップを開催した。
方法と内容
- 事前検討会は、高田東中学校関係者と地域住民に逃げ地図の主旨と方法を説明した後、3グループに分かれて米崎・小友・広田の3地区の逃げ地図を実際に作成して、参加者に逃げ地図づくりの技術を習得してもらうとともに、各地区の逃げ地図の作成範囲と時間、設定条件等を検討した。その結果、中学生参加ワークショップでは、米崎地区と小友地区はそれぞれ東西2地区に分け、広田地区は主要部の逃げ地図を作成することにし、避難目標地点は避難所への経路の有無の2ケースを設定することにした。
- 9月21日の本番のワークショップでは、高田東中の60名が合計8班、すなわち、米崎地区4班、小友地区2班、広田地区2班に分けて逃げ地図を作成した。一方、地域住民は各地区に分かれ自らの地区の逃げ地図を作成した。
- 逃げ地図の作成にあたっては、津波が他に先んじて遡上する河川および水路に架かる橋梁は一律通行不能とし、避難所に通じる高台の道路等がなく被災後孤立するおそれのある場所に留意して逃げ地図を作成した。
成果と課題
- 川沿いや水田のあぜ道等の避難上危険な場所が認知され、中学生の立場から安全な避難経路の確保に関する意見が多く出された。例えば、「(海沿いは)回り道が大変。避難できる道が必要だ」「お年寄りには厳しい砂利道である」「孤立地帯へは逃げない方が良い」など。
- 作成した逃げ地図を文化祭に展示した際に、逃げ地図づくりの趣旨と方法、作成時の様子の写真、作成した生徒の感想も展示した。文化祭には、地域住民も多数訪れ、その後、高田東中学校区の各地区(米崎・小友・広田)において地域住民らによる逃げ地図づくりが行われた。
基本情報
開催年月日 | 2013年9月21日(土) ※事前検討会を以下の内容で開催 開催年月日:2013年8月24日(土)14:00〜16:30 開催場所:再生の里ヤルキタウン2階会議室 主催:陸前高田まちづくり協働センター・陸前高田市立高田東中学校 協力:明治大学都市計画研究室 参加対象:高田東中学校PTA、同中学校区の地域住民 参加者数:約30名 |
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開催場所 | 高田東中学校(旧米崎中学校)体育館 |
主催 | 陸前高田まちづくり協働センター・陸前高田市立高田東中学校 |
協力 | 明治大学山本俊哉研究室、千葉大学木下勇研究室、日建設計ボランティア部 |
参加対象 | 高田東中学3年生と同中学校区住民 |
参加者数 | 130名(内訳、中学生60名、校区住民33名、その他関係者37名) |
新聞掲載 | 東海新報 2013年8月25日 読売新聞 2013年9月22日 河北日報 2013年9月22日 東海新報 2013年9月22日 岩手日日新聞 2013年9月22日 日本経済新聞 2013年10月11日 |
学会発表 | |
白幡玲子・山本俊哉・吉野加偉・木下勇・羽鳥達也・谷口景一朗「陸前高田市における逃げ地図の活用と展開プロセス-逃げ地図を活用した津波防災まちづくりに関する研究(2)」日本建築学会大会(近畿)学術講演梗概集, pp663-664, 2014年9月13日 |
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リンク先 | |
ワークショップの様子
広田地区の逃げ地図づくりに取り組む中学生
作成した広田地区の逃げ地図の発表
逃げ地図に付記されたメッセージ
小友地区の逃げ地図
米崎地区の逃げ地図