' 下田市立朝日小学校  | 逃げ地図

事例紹介

静岡県 下田市立朝日小学校 

対象災害
  • 津波

経緯と目的

  • 下田市立朝日小学校では、東日本大震災後、校舎の裏山を緊急避難場所として位置づけ、校長の働きかけによってその避難階段や周辺環境の整備を進めるとともに、その避難場所への避難訓練を毎月数回実施するなど、児童の安全対策や防災教育に精力的に取り組んできた。また、小学校6年生は毎年、授業の一環で防災をテーマとした研究活動を行い、その成果を毎年2月に開催される「はまぼう発表会」において地域住民に発表してきた。
  • 朝日小のPTA会長を務めた地元建築家のS氏は、2013年8月に朝日小学校で行われた防災キャンプで逃げ地図づくりを知り、自発的に吉佐美地区の逃げ地図をつくり、区が指定した津波からの緊急避難場所が適切な位置に設置してあることを検証した。また、朝日小が位置する吉佐美地区の逃げ地図づくりの成果の普及には子どもたちの取り組みが欠かせないとして、朝日小学校に逃げ地図の作成を働きかけてきた。
  • こうした状況下、朝日小の6年生担当教諭が①逃げ地図の作成を通して、津波の危険性や避難方法を考える、②作成した逃げ地図を活用して、フィールドワークを行って体感する、③最後に地域住民へ成果を発表して他者と共有するという3つのステップの防災学習プログラムを組んだ。すなわち、逃げ地図を作成し考える場を提供するだけでなく、体感し共有する機会を設けることで、相乗的な防災意識の向上を図るプログラムとした。

方法と内容

(2015年度逃げ地図づくりワークショップ)

  • 地元建築家で朝日小学校評議員の進士弘幸氏が、逃げ地図づくりを補助するために吉佐美地区の地形模型を制作するとともに、小学校から自宅までの経路を3分ごとに色分けする「お帰り地図」の作成を子どもたちに課して、逃げ地図づくりワークショップに備えた。
  • 2015年11月11日に朝日小学校で開催した逃げ地図づくりワークショップは、小学6年生11名が3班に分かれて、吉佐美地区と田牛地区の逃げ地図を作成した。その際、隣町の河津町立南小学校のワークショップ用に開発された教材と進士弘幸氏作成の地形模型を用いた。
  • 次に、作成した逃げ地図を使って緊急避難場所を点検するフィールドワークを2015年度に合計4回実施した。ストップウォッチを使って計測しながら避難経路を歩いてみることで、逃げ地図と照らし合わせて避難について考える機会を提供した。
  • 2016年2月10日に朝日小学校で開催された成果発表会には、児童の保護者をはじめ地域住民100名程が来場した。発表に際して、6年生が自ら作成した3種類の手書きの逃げ地図と緊急避難場所の写真とコメント入りの防災パンフレットが配布された。

(2016年度逃げ地図づくりワークショップ)

  • 2016年7月22日に開催したワークショップは、明治大学大学院生が逃げ地図づくりの説明役とワークショップ全体のファシリテイター役となり、小学6年生23名が5班に分かれて、吉佐美地区と田牛地区の逃げ地図を作成した。前年度実施した「お帰り地図」づくりを試さずに臨んだが、逃げ地図づくりは円滑に進めることができた。
  • 前年度と同様に、6年生が自ら作成した逃げ地図づくりの成果発表会を保護者や地域住民向けに行ったが、2016年度は小学校低学年でも理解できる逃げ地図も合わせて作成し、防災パンフレットとして配布された。

(2017年度逃げ地図づくりワークショップ)

2017年度は、朝日小学校の校長先生と担任の先生が替わったが、評議員の進士弘幸氏が逃げ地図づくりの説明役とワークショップ全体のファシリテイター役となり、小学5年生18名が3班に分かれて、吉佐美地区の逃げ地図を作成した。前日に「お帰り地図」づくりを試して臨んだこともあって、逃げ地図づくりは円滑に進めることができた。

成果と課題

  • 事前に「お帰り地図」を作成した効果もあって、円滑に逃げ地図を作成することができた。WS後に子どもたちに記入してもらった「まとめシート」には、地形模型の観察と逃げ地図の作成を通して自宅周辺の危険性を再認識した旨のコメントが多くみられ、各種教材を使った防災教育プログラムの効果が見られた。
  • 緊急避難場所を点検するフィールドワークのルートは児童が話し合い予め設定し、校区内4地区の緊急避難場所を探索することで、避難について広域的に考える機会にもなった。
  • 児童たちが作成した防災パンフレットには避難看板の問題を指摘するイラストや新聞紙スリッパの作り方等も掲載され、来場した地域住民の好評を得て話題を呼んだ。発表した児童に対するアンケートでは、自らが発表することで避難に関する情報を再整理することにつながった旨の感想や、家族に対して逃げ地図を教えたい旨の意見があり、防災に対する理解力の向上と子ども発信の波及効果を同時に得られる好機となった。

翌2016年度は、児童たちが逃げ地図ワークショップを通して学んだことを地域に発信し、地域の一員として地域の防災力を向上させていけるように、児童たちが地域の高齢者に緊急避難場所に関してインタビューを行うプログラムを組んで逃げ地図づくりワークショップに臨んだ。

基本情報

開催年月日 2015年11月11日(2015年度逃げ地図づくりワークショップ)
2016年7月22日(2016年度逃げ地図づくりワークショップ)
2017年7月20日(2017年度逃げ地図づくりワークショップ)
開催場所 下田市朝日小学校体育館(2015年度逃げ地図づくりワークショップ)
朝日小学校体育館(2016年度逃げ地図づくりワークショップ、2017年度逃げ地図づくりワークショップ)
主催 朝日小学校
参加対象 小学6年生(2015年度逃げ地図づくりワークショップ、2016年度逃げ地図づくりワークショップ)
小学5年生 (2017年度逃げ地図づくりワークショップ)
参加者数 11名(3班構成)(2015年度逃げ地図づくりワークショップ)
23名(5班構成)(2016年度逃げ地図づくりワークショップ)
18名(3班構成)(2017年度逃げ地図づくりワークショップ)
学会発表

山中盛・森脇環帆・山本俊哉・木下勇「下田市立朝日小学校における逃げ地図の作成・活用プログラムの試行-多様な災害からの逃げ地図の作成・活用に関する研究(7)-」日本建築学会大会(九州)学術講演梗概集, 2016年8月

ワークショップの様子

逃げ地図づくりを説明する進士氏

前日に作成した「お帰り地図」

作成した逃げ地図の発表(2016年2月、朝日小学校)

2016年度に小学6年生が作成した逃げ地図

2016年度に小学6年生が作成した低学年向けの防災パンフレット

小学6年生の感想文(2016年2月、朝日小学校)

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