' 串本町田原地区2 | 逃げ地図

事例紹介

和歌山県 串本町田原地区2

対象災害
  • 津波

経緯と目的

本ワークショップは、文部科学省の科学技術試験研究委託事業「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」の一環として開催されたものである。
2023年1月16日の逃げ地図づくりワークショップで避難ルートに関する気づきは色々出てきたものの、津波到達時間が短いことや高齢者が階段を上らなければ避難できない問題があった。また、東日本大震災以降に再設定された津波浸水想定や「想定に囚われるな!」「率先避難者になれ!」というような避難行動を促すための津波避難原則がかえって避難を諦めさせる現状があり、地域としては現実的な課題解決が求められていた。
そこで、本ワークショップの目的は逃げ地図を活用しつつ、リスクを正しく理解し、避難を巡る地域課題解決のための話し合いの可能性を探ることであった。

方法と内容

まず、津波から避難可能かどうかを具体的に考えるために、各場所における津波浸水開始時間を示す地図を用意した。この地図は、南海トラフ巨大地震時の最悪シナリオで津波浸水深30cm時の津波遡上時間を記したものであり、避難困難を示す時間でもある。
次に、前記した地図の上に前回逃げ地図づくりワークショップ(2023年1月16日開催)の成果物をリライトしたものを重ね合わせした図を作成した。本ワークショップでは、この図を「逃げ地図」として使用した。

ワークショップでは、命を守るために必要な最悪想定(南海トラフ巨大地震)と過去の実績(昭和南海地震、昭和東南海地震)の3種類のシナリオについて考えることとした。昭和南海地震については経験者からヒアリング調査をした上で、ワークショップでも参加者らに言い伝え等を確認した。昭和東南海地震については経験者が見つからず、ワークショップでもあまり情報が得られなかったため、最終的な話し合いのシナリオからは外した。
作業は、各シナリオにおける避難の課題や気づきについて話し合った上で、田原地区の避難可能なまちづくりのためのアイデア出しを行い、最後に発表を通して皆で共有した。

成果と課題

田原地区は昭和南海地震による津波浸水の被害はあったが、建物の崩壊のような大きな被害は他の地域に比べれば少なく済んだことがわかった。しかし、昭和南海地震が発生した時に比べ高齢化率が高いことや、地形の変化、頑丈な構造物(橋梁)への交替が被害を増す方向に働く恐れがあることについても話し合いが進んだ。さらに、逃げ地図のみで検討した時には気づきにくかった田原地区の今までの土地利用の考え方、震源地による津波遡上の方向性や地形を考慮した避難場所と避難ルートの検討が必要であることに改めて気づくことができた。
なお、今までは「より高いところへ」という避難の考えを優先して地区の防災対策に取り組んできたが、災害弱者(高齢者・女性等)の避難が考慮されていなかったことに対して今後具体的に考え、対策を講じていくことにした。

基本情報

開催年月日 2024/2/26
開催場所 山村交流センター(田原地区)
主催 京都大学防災研究所
協力 京都大学防災研究所 牧紀男研究室、串本町
参加対象 地域住民
参加者数 住民11人

ワークショップの様子

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