' 北斗市(谷好・常盤・中野通・久根別・七重浜) | 逃げ地図

事例紹介

北海道 北斗市(谷好・常盤・中野通・久根別・七重浜)

対象災害
  • 津波

経緯と目的

日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震における津波で大きな被害が想定されている北斗市において、上磯高等学校を含む広範囲において避難困難地域が指定されている。そのため有事に迅速な津波避難を行うためにも津波浸水区域からの避難場所・経路の認知の促進を図ることが課題となっていた。

こうした状況下、2024年1月31日に函館市役所で開催された逃げ地図づくりワークショップ(以下、WSと略す)に参加した防災士の間で函館市内外でも逃げ地図づくりを普及していきたいという声が上がり、北海道防災士会道南ブロックが協力している上磯高等学校の「1日防災学校」において逃げ地図WSを開催することになった。

上磯高等学校では、北海道防災士会の協力を得て避難所体験会(HUG)などを通して防災教育を進め、生徒の防災意識を高めてきたが、避難場所や避難経路を十分に認知するまでには至っていなかった。

そこで、このWSを通して避難場所や避難経路の認知を促す防災教育を進めるため、さらには同市内の学校教職員や防災士と一緒にグループワークを行うことで地域全体での防災意識の向上を図ることを目的に開催した。

開催にあたっては、上磯高校及び北海道防災士会道南ブロック2023年11月の損保ジャパン札幌、2024年1月の函館市役所での逃げ地図WSに引き続き、北海道大学の都市防災学研究室と都市地域デザイン学研究室がWS開催の準備運営を引き受けた。

方法と内容

  • WSに先立ち、北海道大学の中嶋唯貴准教授と逃げ地図研究会代表の山本俊哉・明治大学教授が津波避難に関する学術的な知見と逃げ地図づくりの方法について、それぞれ15分間、合計30分間のレクチュアを行った。
  • WSでは北斗市の浸水想定区域を谷好、常盤、中野通、久根別、七重浜01、七重浜02の6地区に分け、それぞれ夏期と冬期の避難を想定した合計12班の高校生と防災士の混成チームで逃げ地図を作成した。各班のファシリテイターは函館市役所などで逃げ地図WSを経験した北海道大学の大学院生と防災士が担った。
  • 避難目標地点はそれぞれ浸水域外または既存の市指定の津波避難ビルと高規格道路高台へ徒歩で避難する条件で作図を行った。夏期と冬期の避難の歩行速度は、夏:129m/3分、冬:103m/3分とした。
  • 各班のグループワークは1時間以上をかけて、A1サイズ(1/2,500)の白地図に色分けし、避難方向の矢印を入れ、気がついたことを付箋に書き出して意見交換を行った。
  • その後、会場の体育館の壁面に作成した逃げ地図を張り出し、高校生と防災士の皆さんがそれぞれ12班全ての逃げ地図の内容とその作成を通して気がついた点を発表して得られた成果を共有した。
  • WS終了後、ファシリエータを担当した北大大学院生・防災士と高校生で意見交換の場を持った。

成果と課題

  • 地区内を川が縦断している地区では、その途中に橋を架ければ明らかに避難時間を短縮できることがわかり、参加者の間で具体的な避難改善方法を共有できた。
  • 七重浜など北斗市の市境近くに位置する地区では黒色(避難時間21〜24分間)に塗られる場所がいくつか見られたが、隣接する自治体の情報も把握しておくことが避難の手助けになるかもしれないと対象範囲に住む高校生から意見があり、道南エリア全域での対策には自治体間での連携の必要性が示唆された。
  • 津波避難ビルに指定されている団地周辺でも紫色(避難時間15〜18分間)に塗られる場所がみられたが、非常時はフェンスや柵を開けやすくして避難路になるような工夫をするべきだというような細かな改善方法を発見することができた。
  • 逃げ地図対象範囲に住む高校生、教職員・市の防災担当者・市内外の防災士など、様々な参加者が集まりWSを行ったことで、通学する中での危険なポイントやより効果的な避難方法の有無などの意見を交換することができ、状況の理解が深まった。また、防災士の参加者からは、今後それぞれの地域で同じようなWSを行いたいという声も生まれた。
  • WS実施日の前々日に行った3kmの水平避難訓練の体感と比べることによって、地図上の色塗りの結果がより実感できたという意見がでた。地図上でのシミュレーションと実際の訓練を合わせて行うことの有効性が示唆された。
  • WS終了後に意見交換の場を持ったことで、地域においてほかの防災イベントと合わせどのように展開していくべきか現在の状況と確認と方向性の共有が出来た。

基本情報

開催年月日 2024年5月18日
開催場所 北海道上磯高等学校 体育館
主催 北海道上磯高等学校、北海道大学都市防災学研究室、同大学都市地域デザイン学研究室
参加者数 80名(内訳:上磯高等学校の高校1〜3年生(約50名)・教職員、北海道大学学生(6名)と教員、市内外防災士約10名、北斗市内学校教職員、北斗市防災担当職員、森町防災対策官、北海道渡島総合振興局やNHK函館放送局の関係者など)
新聞掲載 Dotsu-Net 日刊教育版 2024年5月23日
https://education.dotsu.co.jp/articles/detail/102085

ワークショップの様子

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