' 福井市 清明地区 | 逃げ地図

事例紹介

福井県 福井市 清明地区

対象災害
  • 洪水

経緯と目的

開催経緯】

福井市清明公民館では、地区住民の防災意識の向上を図るため、2024年2月17日(土)、清明公民館において、洪水を想定した「逃げ地図」づくりを実施しました(共催;清明地区自主防災会連絡協議会)。

きっかけは、福井市内在住の「逃げ地図研究会」会員が開催した「逃げ地図づくり」のワークショップでした。これは、イベントの一プログラムとして行われ、様々な地区の参加者が福井市中心部の地図を使用して行いました。

このあと、実際居住する地区の地図を使って住民が参加するワークショップを開催したい、との同会員の熱意により、清明地区と研究会会長をつないでいただきました。

また、同時に、損保ジャパン株式会社様が社を挙げて逃げ地図の普及啓発に取組んでおられることも紹介され、20241月中旬には、清明地区の地図を使った、行政職員と地元損保ジャパン株式会社福井支店職員らとの勉強会も開催され、同公民館職員や地元の自主防災会連絡協議会会員も参加させていただいています。

【洪水想定の理由

今回のワークショップでの災害は洪水に想定しました。

清明地区は、福井市の南部に位置し、田園と里山と住宅地中心という構成の地区です。したがって、逃げ地図づくりを行うには、避難場所やランドマークなどが少なく、また、ハザードマップでは地区のほとんどの平地が水没すると予想されています。

この地区に居住したり勤務したりする方々の記憶に深く刻まれている災害は約20年前に発生した「福井豪雨」です。この災害では、福井市内を流れる足羽川左岸が決壊しました。清明地区の一部も浸水し、床上・床下浸水の被害を受けた住宅や事業所も多くありました。

その後、豪雪や台風被害等数々の災害に見舞われてはおりますが、やはり、水害や土砂災害などを伴う災害がイメージしやすいと考えました。

方法と内容

今回、清明地区で実施するにあたり、先の勉強会で明らかになった課題を元に企画者が配慮したことは、地区住民がこのワークを行うことで、かえって「逃げるところがない」「あまりに時間がかかる」といったマイナスのイメージが定着しないように、また、リスクコミュニケ―ションをより多く生み出すことができるように、といった点です。

そのため、グループ分けの構成員に配慮し、かつ、各グループの設定条件を全部変える、ということを試みました。初めて開催する地区での取組みとしてはハードルの高い設定ではありましたが、綿密な打ち合わせとサポート体制を十分つくることで実現することができました。

地区を網羅する白地図の入手は福井市役所情報統計課のデータを使用しました。地区を南北に分け、1/2,500と1/5,000で合計4種類のものを出力しました。 その際、地区外への避難も想定内だったため、近隣のランドマークが入るよう微妙な調整を、データ画面を見ながら慎重に行いました。

避難手段は徒歩と車両の両方を設定し、さらに徒歩の条件は昼間と夜間で設定しました。地図は1/2,500を使用して逃げロール(革紐)は昼間3分129m、夜間3分103mの2種類を使用しています。

また、車両は1/5,000を用意し3分450mの逃げロール(革紐)を使用しました。

この車両の避難速度の根拠は、東日本大震災時の石巻市の中心市街地での自動車の移動速度の150m/分を準用しています。

以上で6種類の逃げ地図ができることになりました。

避難目標地点は、指定避難所(足羽高等学校、清明小学校、清明公民館及び清明保育園)のほか、地区内の3階建て以上の建物や、避難協定を結んでいる洪水避難ビル、又は近隣の公共施設などを避難目標地点として、住宅地図を参照しながらグループの参加者が話し合って設定する形式にしました。

当日約30人が6グループに分かれ、それぞれのグループに損保ジャパン担当者らをファシリテーターとして配置した状態で条件の異なるワークを約1時間かけて逃げ地図づくりに取組みました。

作成した6種類の逃げ地図は、それぞれのグループが発表し、気づいた点を述べるなど成果と課題を全員で共有しました。

成果と課題

参加者は10代から80代まで幅広く様々な視点から地図を作成することができました。

10代などの若年層からは「指定避難所自体が浸水予想の場所にあるから、実際は使えないのではないか」「指定避難所が一か所にかたまって設置してあり、車を使って逃げる想定では大渋滞を起こすし、全員がたどりつけないのではないか」といった率直な意見も出るなど、災害に対して、行政任せではなく、自分たちが本当に逃げるべき場所、とるべき行動をあらためて検証する必要性を感じていただいたようでした。

また、高齢者も多く(70代以上7名)、「これまでこの地区(町内)では浸水被害が起きたことがないから、これからも大丈夫」といった、過去の経験への過信も散見されたので、彼らへの啓発支援を継続的に行う必要性も感じているところです。

今回は清明地区を中心とした参加者でしたが、地区外の方からは「次回は私の住んでいるエリアでもやってみるべきだと思いました。」と言われたり、「今回は避難場所からのワークだったが、今度は自宅の周辺をより丁寧にみて自分がどこへ逃げるか考えたい。」などと、避難経路への関心の高まりを示す感想や意見が多く寄せられています。

基本情報

開催年月日 2024年2月17日(土)14:00~16:00
開催場所 福井市清明公民館2階和室
主催 福井市清明公民館
共催 清明地区自主防災会連絡協議会
協力 逃げ地図研究会
損保ジャパン㈱福井支店
参加対象 福井市清明地区住民、麻生津地区住民及び清明地区幼保園関係者
参加者数 約30名
新聞掲載 福井新聞2024年2月19日

ワークショップの様子

逃げ地図づくりのチラシ

清明地区の逃げ地図づくりの様子

作成された清明地区の逃げ地図(一部)

逃げ地図in清明記念写真

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