事例紹介
岩手県 陸前高田市広田地区
- 対象災害
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- 津波
経緯と目的
- 広田地区は、高台移転等の復興事業に伴い周辺環境が大きく変わることから、町内各集落の集団移転協議会が連合した広田地区集団移転協議会が津波からの避難の視点から復興事業の整備計画と防災対策を検討するために逃げ地図づくりワークショップを開催した(第1〜4回)。
- 逃げ地図づくりワークショップは参加者が限られることから、震災後は被災した低地に行くことが少なくなった子どもたちや被災地支援に来ているボランティア向けに、逃げ地図を活用して高台への避難経路を歩く「キツネを探せ」というアーティスト・森脇環帆が開発した防災学習プログラムを実施した(第5回)。
- 第6〜8回は、計画されている野外活動センターの整備に合わせた避難計画や被災した低地の土地利用などを検討するため、作成した逃げ地図を活用した住民ワークショップを重ねた。
方法と内容
- ワークショップを2014年の8~9月に3回連続して開催し、2015年1月にその報告会を開催した。
- 1回目のワークショップでは、地元中学生や地域住民、広田小PTA、大学生ボランティアなどが参加し、7地区に分かれて逃げ地図を作成した。2回目のワークショップは、消防団員、3回目は漁協女性部等の関係者を集めて開催した。2,3回目のワークショップでは過去の成果をリライトした地図をもとに、議論が行われた。
- 住民に広報する逃げ地図は、「避難上の留意事項」「整備事業関連事項」の2種類に分類されるコメントを掲載した。後者は避難に係る整備事業の情報のみを記載した。
- 一方、地域ごとに作成された行政向けの「課題図」には、「整備計画に対する意見」「防災対策の検討課題」に分類されるコメントのほとんどを掲載し、「震災からの教訓」も一部採用し、それぞれ分類項目ごとに色分けした枠内に記載した。
成果と課題
- 各回のワークショップを、中学生、消防団員、漁協女性部と、主たる参加対象を変えて開催したことにより、多角的な視点からのコメントが集まった。
- 1回目に中学生らが作成した逃げ地図を2回目に消防団員らが点検して修正したことにより精度の高い逃げ地図を作成することができた。
- 3回目は過去2回のワークショップで作成されたコメントを参照しながら議論したことで、より深い議論に発展した。
- 半島部に位置する広田町地区は震災時、道路が寸断されて孤立したため、逃げ地図WSでは、①尾根道を走り広田小学校につながる県道に各地区の高台移転に伴うアクセス道路をつなぐこと、②一次避難場所での電源・水源の確保などが今後の計画課題として出された。
- ワークショップの成果を住民向けの広報版の逃げ地図と、行政向けの集落別の復興事業・防災対策の課題図にリライトしたことで、それぞれの目的に沿った逃げ地図を作成することができた。
- 2015年1月には、リライトした逃げ地図をもとに、地域をはじめとした関係者への報告会を開催し、「広報版」逃げ地図を町内の各地区公民館や岩手県大船渡合同庁舎に掲示するなどし、情報共有を図った。避難計画に盛り込む緊急避難場所や避難経路は復興事業の進展に伴って変化することから、今後も逃げ地図を作成する必要性が地元関係者の間で確認された。
- 「課題図」は広田地区集団移転協議会による各種事業への要望・調整のための基礎資料として活用された。
基本情報
開催年月日 | (1回目)2014年8月5日 (2回目)2014年8月24日 (3回目)2014年9月21日 (4回目)2015年1月11日(報告会) (5回目)2015年8月9日(キツネを探せin陸前高田) (6回目)2016年1月17日(第2回こながに会議) (7回目)2016年2月11日(第3回こながに会議) (8回目)2016年2月18日(第4回こながに会議) |
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開催場所 | 広田小学校(第1〜2回、第4〜5回)、喜多地区公民館(3回目、第6〜) |
主催 | 広田地区集団移転協議会(第1〜4回)、ツママレプロジェクト in 陸前高田実行委員会+広田地区集団移転協議会など(第5回)、田谷地区集団移転協議会(〜8回) |
後援 | 陸前高田市、岩手県沿岸広域振興局、明治大学震災復興支援センター(第1〜4回) 陸前高田市広田地区コミュニティ推進協議会、明治大学震災復興支援センター(第5回) |
協力 | 明治大学山本俊哉研究室、子ども安全まちづくりパートナーズ |
参加対象 | (1回目)中学生、地域住民、小学校PTA、大学生ボランティアなど (2回目)消防団員、地域住民、小学校PTA、大学生ボランティアなど (3回目)漁協女性部、地域住民など (4回目)地域住民、行政関係者、他地域住民など (5回目)地域の小・中学生、地域住民、復興支援の大学生など (6回目)田谷地区の地域住民 (7回目)田谷地区の地域住民 (8回目)田谷地区の地域住民 |
参加者数 | (1回目)約70人 (2回目)約50人 (3回目)約30人 (4回目)約30人 (5回目)約70人 (6回目)約50人 (7回目)約20人 (8回目)約20人 |
新聞掲載 | 岩手日報 2014年8月6日 東海新報 2014年8月6日 東海新報 2014年9月10日 東海新報 2015年8月7日 岩手日報 2015年8月8日 岩手日報 2015年8月10日 東海新報 2015年8月11日 |
学会発表 | |
白幡玲子・山本俊哉・吉野加偉・木下勇・羽鳥達也・谷口景一朗「陸前高田市における逃げ地図の活用と展開プロセス-逃げ地図を活用した津波防災まちづくりに関する研究(2)」日本建築学会大会学術講演梗概集(都市計画), pp663-664, 2014年9月13日
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リンク先 | |
震災を教訓に住民が手づくり「逃げ地図」で命を守る/陸前高田市
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ワークショップの様子
地元中学生らを中心に逃げ地図を作成した第1回WS
地元の消防団員が多数参加した第2回WS
漁協女性部のメンバーが多数参加した第3回WS
第1〜3回WSの成果の発表会ポスター