事例紹介
福井県 越前市 旧武生地区(武生東・武生北・武生南)
- 対象災害
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- 洪水
経緯と目的
越前市の旧武生地区は、越前市役所やハピラインふくい「武生」駅を中心に、国府1300年の歴史と伝統が息づく街並みが広がっている。密集した住宅や商業施設が多く、災害時の避難に関する課題が以前より指摘されてきた。
特に2017年2月には、中心市街地で10棟が焼ける大規模火災が発生しており、災害への備えは喫緊の課題となっている。
また、越前市には企業の工場が多く稼働しており、外国にルーツを持つ人々が多く就労し生活している。こうした地域の特性を踏まえ、多様な住民が共に防災について考える機会として、今回のワークショップを企画した。
本ワークショップは、ふくい逃げ地図研究会の主催で開催された。開催にあたり、外国人技能実習生受け入れ事業に従事する職員らが地区内外の住民に広く声をかけ、多様な参加者を得た。
本開催にあたっては、事前に福井市中央公民館で行われた「逃げ地図講座」に数名が参加しており、その経験を活かしてファシリテーターとして地図作成をリードした。
方法と内容
<想定災害と地域特性>
越前市では土砂災害、水害、地震災害、ため池災害などを想定した防災ハザードマップを作成し、市民への情報提供を行っている。
本ワークショップでは、建物の密集する旧武生地区において「洪水」及び「地震火災」を想定災害とし、どこへ避難すべきかの判断が困難な状況を重視してとりくんだ。
<ワークショップの方法>
•水害のほか、地震防災マップの中の「ゆれやすさマップ」を活用
•越前市役所危機管理課の協力のもと、1/2,500の縮尺の白地図を使用
•市外からの参加者らに配慮し、小学校等の指定避難所はあらかじめ地図に名称を記載
•徒歩での避難を想定し、時間帯を2パターン(昼間/夜間)設定
講師には、逃げ地図研究会会員である株式会社セコムIS研究所の井上雅子氏を迎え、ファシリテーターとしてふくい逃げ地図研究会のメンバーがサポートした。
参加者はグループに分かれ、話し合いを通じて指定避難所のほか避難目標地点を決定した。
5種類の逃げ地図を作成し、成果を全体で共有した。
<地図を使った「まち歩き」>
ワークショップ終了後、作成した逃げ地図を手に、講師やふくい逃げ地図研究会メンバー及び地元有志らが実際の避難経路を歩いて検証した。
指定避難所のひとつである「武生南小学校」をまち歩きの目的地と設定し、ここへ向かいながら、学校敷地開口部や道路状況、視界及び地図に載っていない情報(細い路地や曲がりくねった道など)らを確認した。また、この街の特徴ともいえる、カギ状に曲がりくねった路地や広い敷地を持つ寺社なども確認し、災害を想定した避難経路や目標物などについて各々が感想や意見を共有した。
成果と課題
•地図の完成をゴールとするのではなく、リスクに対する話し合いや過去の災害情報の共有そのものが学びであることが再確認された。
•外国人技能実習生からも「一緒に作業できてよかった」という声があり、多様な背景を持つ参加者との共通理解の重要性が再認識された。
•市内外の参加者を得たため、「地理がわからない」という不安を持つ者に対しては、講師や地元参加者及びファシリテーターが丁寧に説明や支援を行うことにより、徐々に能動的な意識の向上が見られるようになった。
•対象地区には高い建物が少なく、避難場所が設定しにくい、あるいは、避難の際の目印となりにくいという町の特徴が浮き彫りになった。
•地震火災の想定では、過去の火災の様子について、地元住民から話を聞くことができた。
•地震火災想定と洪水想定では色分けの進度(方向)が全く異なることが、作成された地図を比較すると読み取れた。
•「火災発生場所が不明な中、どこへ逃げるべきか分からない」という声に対し、「河川を目指す」という具体的な避難方針を示すことで、行動のヒントを得ることができた。
•地震火災に関しては、火元が不明な場合、「風向きを考慮すべき」などの示唆が参加者から出された。
<今後に向けて>
まち歩きによって、地図情報だけではわからない現地の様子を知ることができた。地元住民の案内により、地域の歴史やまちづくりの変遷も学ぶことができた。また、掲示されている地図などの情報が一部古いままのものも散見され、情報の更新や、標識の整備などハード面での改善も行政に求めていく必要性を感じている。
地元研究会のメンバーらも、逃げ地図の作成と現地確認をセットにした取り組みは、防災教育の実効性を高める有効な手段であると実感し、今後もこのような取組を提案していく重要性が感じられた。
基本情報
開催年月日 | 2024年11月8日(金)10:00~11:30 |
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開催場所 | 越前市 和鉄会館(越前市武生柳町1-3) |
主催 | ふくい逃げ地図研究会 |
協力 | 逃げ地図研究会 |
参加対象 | •NPO職員(外国人技能実習生受け入れ事業) •外国人技能実習生 •社会福祉協議会関係者 •防災士 •地元住民 など |
参加者数 | 30名 |
新聞掲載 | 福井新聞(2024/11/13)、 FBC放送(2024/11/22) |