事例紹介
静岡県 南伊豆町青市地区
- 対象災害
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- 土砂災害
経緯と目的
- 青市地区には津波の浸水が想定される区域が一部あるが、地区のほとんどが土砂災害の警戒区域に指定されている。自主防災会が青市上組集会所や仲組公会堂を一次避難地に、南伊豆町が南伊豆東中学校を指定避難所にしていたが、青市公会堂の近くの崖が崩れ、住民の間からの土砂災害に対して不安な声が高まっていた。
- 青市地区の主要道路の国道136号は、夏の観光シーズンなどに渋滞することから、避難行動要支援者以外は原則徒歩で避難するとしているが、土砂災害は雨天時に発生するため、現実的には車による避難が想定される。こうしたことから車による避難方法が検討課題になっていた。
- 南伊豆町立東小学校で開催された津波と土砂災害からの逃げ地図ワークショップに参加した町会長が逃げ地図づくりの手法に感銘し、機会があれば、土砂災害からの逃げ地図ワークショップを青市地区で開催したいと考えていた。
- こうした経緯から、避難行動要支援者に留意し、徒歩または車を使っていつどこへ避難するかを検討するため、土砂災害からの逃げ地図ワークショップを開催した。
方法と内容
- 青市地区を南北2地区に分け、それぞれ徒歩で避難する班と、車で避難する班に分けた全4班で作業を行った。車による避難に関しては、東日本大震災時の調査データから速度を150m/分に設定した。
- 秩父市久那地区における作成手法を利用し、避難場所の設定を公的施設だけでなく民間施設も考慮に入れ、住民の記憶から過去の災害の発生箇所、発生状況を地図に落とした。
- 避難のタイミングについては、「避難準備情報・高齢者等避難開始」と「避難勧告・避難指示」の発令時に分けて避難場所を定めた上で、避難経路を色ぬりした。避難行動要支援者の避難についても検討した。自由に意見を出し合える「友愛的」(青市区長)雰囲気の中で逃げ地図づくりが進められた。
- ワークショップ当日は、東京大学地震予知研究センター所長の平田直教授や静岡県下田土木事務所の担当職員のほか、来日していたイスタンブール・ビルギ大学教授と台湾の淡江大学の教授と大学院生らが逃げ地図作成の様子を見学した。英語と中国語が飛び交い、国際的な雰囲気になったとの住民のコメントを得た。
- 7月に明治大学の学生らがワークショップの成果を整理してリライトした逃げ地図を町会役員らに報告し、今後の課題について意見交換をした。
成果と課題
- 青市地区の北部は、避難準備情報・高齢者等避難開始が発令されたら、自主防災会が一次避難地として定めた青市上組集会所や仲組公会堂に避難行動要支援者らが避難して集合するが、車の使用にあたっては駐車方法や通行方向を予め事前に定めておく必要性が明らかになった。また、原則として避難勧告が発令される前に東小学校等の指定避難場所に避難する必要があるが、避難勧告時には避難行動中の安全性に問題のある場所もあることから、それぞれの地域で事前に避難のルールを検討しておく必要性が明らかになった。
- 青市地区の南部は、車であれば、東小学校に避難可能であるが、徒歩の場合は、各班で定めた集合場所に集まり、その後安全な場所に移動すること、また、近くにある公的施設や大規模な商業施設を避難場所とする必要性が明らかになった。
- 参加者のアンケートなどから、土砂災害からの逃げ地図づくりを通して、自分が暮らしている家や地域が土砂災害に関してどれほど危険な所に位置しているかをリアルにつかめ、いざという時にはどこに逃げれば良いかという具体的なイメージを持つことができたという声が多かった。
- 青市区長が主催者を代表して、「これまでは近所の避難場所や避難経路しか想像できなかったが、逃げ地図づくりを通して広域的視点からの避難経路と避難場所に関する共通の問題が明確になった」「この貴重な学びを12月の防災訓練時に区民に還元したい」というコメントを得た。
- 地区として避難場所が少ないことから新たな避難場所の設定や、渋滞発生などの懸念から車使用を再度議論する必要があることから自主防災会の役員の間で話し合い、地区の避難訓練で試してみるという計画を立てた。
基本情報
開催年月日 | 第1回(ワークショップ):2016年4月30日 第2回(成果報告会):2016年7月22日 |
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開催場所 | 青市公会堂 |
主催 | 青市地区自主防災会 |
後援 | 南伊豆町 |
参加対象 | 第1回:町会役員、消防団 第2回:町会役員 |
参加者数 | 第1回:約30名 4班構成 第2回:約10名 |
新聞掲載 | 伊豆新聞 2016年5月1日 |
ワークショップの様子
作業前にハザードマップを読み解く(第1回 ・4/30 )
色塗り作業風景(第1回 ・4/30 )
各班による発表(第1回 ・4/30 )
WS参加者記念撮影(第1回 ・4/30 )
作成された逃げ地図を囲っての町会役員との報告会(第2回 ・7/22)