事例紹介
三重県 尾鷲市三木里地区(第1回)
- 対象災害
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- 津波
経緯と目的
南海トラフ巨大地震が発生すると、尾鷲市三木里地区には高さ15mの津波が15分以内で押し寄せると予測されている。過去には大津波に襲われて三木里神社が高台に移転したという歴史が語り継がれ、三木里自主防災会などは関係地権者や地元企業の協力を得て、自主的に避難通路や避難道路を整備するなど、住民の防災意識は高い。その反面、高齢化が著しいことからはなから避難を諦めている高齢者が少なくない。
こうした状況下、三木里地区会の要請で開催した日本都市計画家協会の「まちづくり出前講座」において津波からの「逃げ地図」づくりが紹介され、三木里に合宿に来た学生たちに協力してもらい、住民と一緒につくってみたいという声が上がり、明治大と愛知工大と三重大の3大学の研究室がそれに応えた。
方法と内容
逃げ地図づくりワークショップの開催にあたって、①津波高は15mまたは20m、②地震発生時は昼間か夜間か、③沿道の老朽ブロック塀や老朽空き家の倒壊に伴う道路閉塞の有無、④新たな避難経路の整備の有無、⑤避難手段は徒歩か車両かというように、避難条件を細かく設定して合計7種類の逃げ地図を作成した。
逃げ地図づくりの概略説明(10分間)の後、一班当たり6〜7名の7班に分かれ、ファシリテイターの大学院生らのガイドで、避難目標地点と避難障害地点の確認、避難目標地点から3分ごとの色塗りと避難方向の矢印を入れて、気がついたことをポストイットに貼った(60分間)。
作成した逃げ地図を横一列に並べて住民らが発表し合い、成果と課題を共有した(20分間)。
成果と課題
三重県で初めての逃げ地図づくりに加えて、市長が自ら色鉛筆を手に取って参加した点では全国で初めてのワークショップであった。
この逃げ地図づくりを通して、①三木里コミュニティセンターの北側正面に位置し、高台の法念寺前の空き地に通じる避難階段を整備すれば、②災害時には畑の中を通り抜けられるようにフェンスに門扉をつければ、③老朽化した空き家や老朽ブロック塀を解体して道路閉塞が解消されれば、逃げ地図の色が変わり、避難時間が短縮できることが明らかになった。また、関係地権者の協力を得て、老朽化した空き家や老朽ブロック塀を解体していくことや災害時には敷地内を通り抜けられるように事前に「災害時協定」を結んでおくことが課題として明確になった。さらには、要配慮者利用施設の利用者や避難行動要支援者も車両を使えば、高台まで避難できることから、それらの関係者を参加を得た逃げ地図づくりが課題となった。
基本情報
開催年月日 | 2023年年8月18日(金) |
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開催場所 | 三木里コミュニティセンター |
主催 | 三木里地区会 |
共催 | 尾鷲市、日本都市計画家協会、愛知工業大学/都市計画・まちづくり研究室、 三重大学/建築・都市計画研究室、明治大学/都市計画研究室 |
参加対象 | 三木里地区住民、三木里在住・帰省中の子どもたち、三木里地区に関心のある尾鷲市民、尾鷲市役所職員ら |
参加者数 | 約50名 |
新聞掲載 | 紀勢新聞2023年8月19日 中日新聞2023年9月1日 |
学会発表 | |
山本俊哉・森脇環帆・丹羽菜々美・益尾孝祐「多様な災害からの逃げ地図の作成・活用に関する研究その23: |
ワークショップの様子
三木里逃げ地図WS案内フライヤー
満席になった逃げ地図づくりの会場
三木里地区の逃げ地図づくりの様子
市長も参加した三木里の逃げ地図づくり
三木里の逃げ地図づくりの設定条件
作成した逃げ地図について発表