事例紹介
和歌山県 由良町小引地区
- 対象災害
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- 津波
経緯と目的
和歌山県由良町は南海トラフ巨大地震に備えて令和元年度に事前復興計画案(全域の土地利用計画案)を策定し、地区単位での計画案も当該住民とともに順次策定を進めてきている。
小引地区は住民参画で事前復興計画案を描いた後、官の協力を得つつ住民主体の避難場所整備や防災訓練も積極的に行っている地区である。しかし、当該地区は人口が約100人の小規模漁村集落で、災害時には孤立の恐れがあるだけでなく、年々高齢化に伴う課題も浮上してきている。そこで、事前復興まちづくりを自分事として考え、対応していくために地区防災計画策定をすることにした。
小引地区は地区防災計画策定のために2023年2月に世帯単位で住民アンケート調査を実施しており、回収率は80%であった。ハザードマップに記載されている情報や自宅の耐震性に関する理解度は高いものの、避難場所までの所要時間や危険箇所の把握については認知度が低いことが判明した。
そのため、地区防災計画の避難マップ作成をするに当たって逃げ地図づくりを行うことで避難時間と距離を理解して頂いた上で、地区としての課題抽出を目論むことにした。
特に、本ワークショップは、健常者の避難だけでなく、地域社会の高齢化に伴う要支援者の避難の課題を明らかにして地区(自治会)としての避難の方針を定めることを目的としている。
方法と内容
第1回は午前中に参加者36人が4班に分かれてまち歩きをし、危険な箇所や活用できる資源などを確認し、「まち点検マップ」を作成した。午後には参加者20人が4班に分かれて、「逃げ地図」づくり(A0サイズ)をした。作業をするに当たって、下記の4つのシナリオを設定し、班ごとに1つのシナリオを付与した。
・健常者(歩行速度43m/分)×道の通行止め無
・健常者(歩行速度43m/分)×道の通行止め有
・避難行動要支援者(歩行速度30m/分)×道の通行止め無
・避難行動要支援者(歩行速度30m/分)×道の通行止め有
※健常者の歩行速度は逃げ地図の基本的な速度設定に合わせ、避難行動要支援者の歩行速度は『和歌山県津波避難計画策定指針』(平成27年11月)のデータを参考とした。
※道の通行止めの有無については、午前中の「まち点検マップ」をもとに住民が設定した。
第2回の際には第1回ワークショップの逃げ地図の成果をアレンジした「避難マップ」を2種類(健常者用と避難行動要支援者用)用意した。その上で、3班に分かれて班ごとに地区としての避難方針や課題などについて話し合った。特に、避難行動要支援者用マップについては要支援者と支援者の避難体制や位置を地図上にプロットした上で、どのような避難が小引地区に適しているか検討した。最後に発表を通して全体的な気づきなどを共有した。
成果と課題
地区防災計画策定をゴールとして、まち歩き→まち点検マップの作成→逃げ地図づくり→避難マップの作成の順に行うことで、従来のハザードマップ上に設定されている避難場所や避難ルートについて図上で具体的な課題を取り上げつつ、方針を定めていくことができた。小引地区では津波の場合の避難場所をこびき防災公園の1箇所に集約し、そこを拠点にするための周辺の整備をいかに進めるかについて議論が進んだ。
また、津波到達時間まで時間的な余裕があっても水門が閉まってしまうと逃げられなくなる人が出てくること等にも気づくことができた。さらに、要支援者用の避難マップを別途作成することで、従来の避難体制では対応できない課題が可視化でき、住民自ら防災訓練を通した検証作業も行った。
逃げ地図づくりが避難検討のツールとしては有用であったが、ワークショップ参加者に要支援者や必要な支援内容を知っている人がいなかったため、課題の深堀りや具体的な避難ルートの設定までには至らなかったのは今後の課題である。
基本情報
開催年月日 | ・第1回:2023年3月19日(午前:まち歩き、午後:ワークショップ) ・第2回:2023年5月21日(ワークショップ) |
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開催場所 | 小引コミュニティセンター |
主催 | 小引区、由良町総務政策課 |
協力 | ・第1回:京都大学防災研究所 牧紀男研究室 ・第2回:京都大学防災研究所 牧紀男研究室、日本ミクニヤ株式会社 |
参加対象 | 地域住民 |
参加者数 | ・第1回:まち歩き(住民36人)、ワークショップ(住民20人) ・第2回:ワークショップ(住民21人) |
ワークショップの様子
まち歩きの様子
逃げ地図づくり
避難マップ(健常者用/要支援者用)を囲んでの意見の出し合い